ギャップ結合構成蛋白質コネキシン43遺伝子ノックアウトマウスにおける神経細胞移動の解析の予備的結果を報告する。 コネキシン43遺伝子相同組換えにより作製したホモ接合体は重度の心奇形を有するため生後早期に死亡する。したがってヘテロ接合体の雌雄を交配することによってホモ接合体を得る。つまり同腹の胎児の中にはコネキシン完全欠損マウス(ホモ接合体)のほか、ヘテロ接合体、野生型の計3種類の遺伝子型が存在することになる。 妊娠12日目、14日目、16日目の母マウスにbromodeoxyuridine(BrdU)を腹腔内注射し胎児脳の増殖細胞を標識した。標識の2日後に胎児を採取し脳を固定し、常法により大脳のパラフィン切片を作製した。採取した胎児組織の一部を用いてPCRによる遺伝子型の決定を行った。パラフィン切片に対しては脱パラフィンののち抗BrdU抗体による免疫組織化学(酵素抗体法)を施行した。細胞核が均等に濃く標識された細胞(以下、標識細胞と略す)は、BrdU標識日に生み出された神経細胞とみなすことができる。ただし血管内皮細胞にも標識がみられたがそれらは測定より除外した。標識細胞の大脳新皮質における分布を母細胞層、移動層、皮質板に区分し各層における標識細胞数を計測した。各層ごとの標識細胞の標識細胞全体に占める割合を%で表示し、統計学的解析に供した。その結果、母細胞層から移動層さらに皮質板に向かっての標識細胞の移動がホモ接合体においては有意に遅延していることが判明した。
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