研究概要 |
[目的] 慢性肺疾患の発生病態を解明するために、人工換気療法を行った極低出生体重児から経時的に採取した気道液について、サイトカイン、エラスターゼ.、肺サーファクタントマーカーを測定した。 [対象と方法] 1995年4月から1998年3月までに本学新生児集中治療室に入院し、気管内挿管による人工換気療法を要した極低出生体重児(<1500g)の121例を対象とした。気道液は生後5日までは連日、その後は生後7日、14日、21日、28日に採取した。気道液中のinterleukin(IL)-6、IL-8、tumor necrosis factor(TNF)-α、顆粒球エラスターゼ、サーファクタント蛋白(SP)-A、SP-B,C、はELISAで測定した。サーファクタントの物理的特性を表すstablemicrobubbleは、Pattleらの方法に従った。また気道液の希釈度をみる目的で、同一検体についてアルブミンと尿素を測定した。 [結果] 1. 慢性肺疾患児(CLD群)は23例(在胎週数26.9±2.6、出生体重844g±270)、非慢性肺疾患児(非CLD群)は99例(在胎週数27.8±2.2、出生体重984g±248)で、CLD群で出生体重が有意に少なかった以外は、母体・新生児情報に有意差を認めなかった。 2. 非CLD群に比べ、CID群では期間中のventilatory index(VI,FiO_2×平均気道内圧/PaO_2)が有意に高く(肺疾患重症度が高い)、また生後2日、3日、4日、5日の気道液中のIL-8、顆粒球エラスターゼが有意に高値を示した。TNF-αはCLD群で生後21日に有意に高値であった。 3. アルブミンと尿素、IL-6、SP-A、SP-BC、stable microbubble数には両群間で有意差を認めなかった。 4. 多重ロジスティック回帰解析により、生後5日までのVI、IL-8、顆粒球エラスターゼの上昇は、その後のCLDの発症と有意の関連のあることが認められた。 [結論] CLDの発症病態には生後早期のIL-8と顆粒球エラスターゼ、およびその後のTNF-αが関与しており、これが肺の炎症と線維化に重要な役割を演じていると考えられた。
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