研究課題/領域番号 |
08457292
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
狩野 猛 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30241384)
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研究分担者 |
内貴 猛 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (40241385)
和田 成生 北海道大学, 電子科学研究所, 講師 (70240546)
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キーワード | 内膜肥厚 / 動脈硬化 / 血管 / 狭窄 / リポ蛋白 / 水透過速度 / 人工血管 / 壁剪断応力 |
研究概要 |
動脈硬化症、嚢状脳動脈瘤および吻合部内膜肥厚などの血管病の局所的発病機構として我々が提唱しているところの血管内壁表面上におけるリポ蛋白の流速依存性濃縮・枯渇現象に関して、さらに検討し、以下のような結果を得た。 (1)コンピュータ・シミュレーションにより、ヒト冠動脈の弯曲部内壁表面上におけるリポ蛋白濃度を血管壁の水透過性を考慮に入れて求めた結果、フローパターンにより表面濃度が変化し、弯曲部内側壁の頂点下流の、動脈硬化が起こり易いとされている低壁せん断応力部位で局所的に高くなることが判った。 (2)水透過速度が極端に異なる人工血管をイヌ総頸動脈に移植し、それを術後数週から1年の期間で取り出し、水透過速度および疑似内膜の厚みを測定するとともに、コンピュータ・シミュレーションにより上記血管の管壁表面におけるリポ蛋白濃度を求め、これらの間の関係について検討した。その結果、いずれの人工血管の場合でも、水透過速度は、移植後1〜2ヶ月程度でホスト動脈における値に近い値まで低下し落着くが、疑似内膜の厚みに関しては、管壁表面におけるリポ蛋白の濃度が高くなっていると予測されるところの、水透過速度の大きい人工血管ほど厚くなる傾向があることが判った。 (3)家兎の総頸動脈に軸対称の狭窄を施し、それを術後0〜8週の期間で取り出して透明化し、流れの可視化によりフローパターンおよび壁せん断応力を求めるとともに、病理組織標本の作製により血管壁構造の変化、およびコンピュータ・シミュレーションにより血管内壁表面上におけるリポ蛋白の濃度分布を求め、これらの間の関係について検討した。その結果、狭窄の程度により狭窄部下流域のフローパターン、壁せん断応力、およびリポ蛋白の表面濃度が変化し、狭窄率が大きい場合には、狭窄部で流れの剥離が起こり、その下流に形成される細長い環状渦によって占められている領域でリポ蛋白の表面濃度が上流側より低くなっており、特に、流れが速く、高せん断応力に晒されている環状渦の中心部近傍で血管壁が薄くなり、直径が大きくなるという、いわゆる狭窄後拡張が起こることが判った。
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