研究概要 |
臓器移植におけるドナー不足は深刻な問題となっており,移植待機中に死亡する患者の数は近年増加しつつある.異種移植はこのドナー不足を解決する手段の一つとして,注目されているが,超急性拒絶反応やその後のいわゆるdelayedxenograftrejectionの機序についてはまだ不明の点が多く残されている.本年は超急性拒絶反応を抑制する手段として,neonataltoleranceの導入を試みると同時に,concordant異種移植の拒絶反応におけるNK細胞の役割について検討した. HamsterからLewisラットへのconcordant異種移植モデルとして,Hamsterの脾臓から採取したBリンパ球を生後24時間以内のLewisラットに投与した.経静脈的投与と腹腔内投与をリンパ球のdoseを変化させながら投与する前処置を行った.8週間後にHamsterからの心移植を行い,tolerance導入の有無について検討した.現在までの所,経静脈投与および腹腔内投与では生着延長効果やtoleranceの導入は認められていないので,今後は最もtolerance導入の可能性の高いと思われる経門脈的投与や胸腺内投与を検討していく予定である. HamsterからLewisラットへのconcordant異種肝移植をモデルとして,移植後経過中の末梢血中および肝浸潤細胞のNK活性を測定し,NK細胞の異種拒絶反応における役割について検討した.異種肝移植後には同種肝移植後と同様に末梢血中および肝浸潤細胞ともにNK活性は抑制されたが,拒絶反応の進行に伴って肝浸潤細胞の相対的なNK活性は増加していた.しかしながらそのNK活性の絶対値は移植前値とほぼ同様であった.抗体を用いてNK細胞を除去した上で,異種肝移植を行い,異種移植拒絶反応におけるNK細胞の役割をさらに検討してゆく予定である.
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