研究者らは、生命維持に必要な肝機能を代償し得るハイブリッド人工肝臓の実現のため、コラーゲンゲル包埋肝細胞をホローファイバーモジュールの中空糸外腔に充填することにより新しい肝細胞灌流培養法を開発、これを応用したハイブリッド人工肝臓を作製した。ラットでは全肝の約4%の肝実質細胞を有する人工肝モジュールにより急性虚血性肝不全モデルおよび薬剤性急性肝不全モデルに対し有効な肝補助効果を示した。ウサギでは全肝の約4%の肝実質細胞を有する人工肝モジュールによりウサギ全肝摘出モデルに対し有効な肝補助効果を示した。さらにモジュールを2本使用した場合では肝細胞は8%となり血液凝固機能の有意な改善がみられ、肝補助に使用する肝細胞数の増加とともに肝補助効果が増大することが示された。また、ブタ急性虚血性肝不全モデルでは、全肝の約7%のブタ肝実質細胞を有する人工肝補助システムにより生存時間が有意に延長し、血中アンモニア濃度の上昇が有意に抑制された。プロトロンビン時間では有意差を認めなかったが、出血傾向は人工肝補助により出現時期の遅延を認めた。さらにノーザンブロット法による人工肝モジュール内の肝細胞の解析では、人工肝モジュール内の肝細胞ではプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)のmRNA発現を単層培養の肝細胞に比べ2倍程度強く認め、凝固線溶系への肝機能補助効果も示唆された。今後、生体への安全性について詳しく検討していく予定である。 肝再生不全時の肝細胞障害の一つである肝細胞のapoptosis誘導が注目されているが、そのメカニズムとしてTGF β-1と低酸素の関与を培養肝細胞を用いて証明した。人工肝治療により宿主血清TGF β-1値が低下するとの報告から、人工肝治療の作用機序として、肝細胞のapoptosis誘導を抑制する可能性が示唆され、今後さらに検討を重ねていく予定である。
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