平成9年度に予定していた実験で、ほぼ予定の成果が得られた. 本年度の研究実施計画 1.当科において切除した膵癌標本をparaffin包埋し、保存し、これより、切片を作成し、キシレンを用いて脱バラを行い、フェノール抽出法にてゲノムDNAを分離しえた。さらに、各種癌遺伝子および癌抑制遺伝子のプライマーを用いて、RT-PCR法により、これら遺伝子を増幅濃縮後、-80℃にて冷凍保存した。現在、増幅遺伝子に対するprobeを用いて、dotblotting hybridization法やSSPC、またはdirect sequence法などにより、Ki-ras、p53などの癌遺伝子や癌抑制遺伝子の変異を検討中である。 2.膵癌のparaffin包埋標本よりスライドガラス上に切片を作製し、各種の癌遺伝子や癌抑制遺伝子蛋白、または各種の細胞増殖因子に対するモノクローナル抗体を用いてこれらの発現を、atrepto-avidin-biotin法により免疫組織染色を行う。 平成8年度においてはKi-rasおよびその機能蛋白p21、fibronectinをはじめとする接着因子の染色を行い、膵癌の予後に関係する因子としては、Ki-ras突然変異のdouble mutation、p53蛋白の発現などが、予後と有意に相関することが判明し、学会、雑誌等に報告している。本年度においては、p53、RB、bcl-2、WAF/1などの癌抑制遺伝子蛋白、TGF-α、EGF、erbB2などの細胞増殖因子とそれらのreceptor、PCNA、Ag-NORsなどの細胞増殖抗原、estrogenやprogensteroneなどのホルモンのreceptorなどの染色を行ったが、p53およびWAF/1の発現が膵癌の予後ならびに制癌剤の効果と相関していることが判明し、学会、雑誌等に報告した。
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