研究概要 |
臓器移植の周術期におけるdonor細胞の付加は、同種移植のみならず異種移植においても効果的な免疫制御プロトコールとして期待される。我々は、生物学的免疫操作による異種臓器移植生着延長効果を検討する目的で以下の検討を行った。 Hamster-to-rat combinationにおけるmixed chimerismの同定法の確立:核酸代謝酵素であるhypoxanthine phosphoribosy-transferase (HPRT) locusは、細胞変異の研究に用いられてきた背景からhamsterおよびratでの遺伝子塩基配列が確認されており、両者間で相同性の低い配列部位がmicrochimerism同定の良いマーカーとなる可能性がある。そこで、hamsterのHPRT geneにおいてラットとの相同性が低い塩基配列部位を選択し、PCR増幅のためのプライマーを作製した。HPRT gene PCR増幅の感受性は、hamster/rat DNA比で1:10^<3・4>であり、その特異性はSouthern blottingにより確認した。 Hamster-to-rat肝移植モデルにおける術前あるいは術後のdonor細胞投与による移植片生着延長効果: Hamster-to-rat異種肝移植モデルにおいて、donor脾細胞の移植前静脈内あるいは門脈内投与(2×10^7cells/body, POD-14)では、ともに超急性拒絶反応を生じた。これにcyclophosphamide (25mg/kg/day, from POD-12 to -8)の投与を併用したところ、超急性拒絶反応は回避されるものの長期生着は得られなかった。次に,同モデルにおいて、骨髄細胞投与によるmicrochimerismの増強がgraft生着を延長させる可能性について検討した。Donor骨髄細胞(2×10^8cell/body)を肝移植直後のrecepientに注入しFK506 (1mg/kg/day)を7日間投与したところ、FK506単独投与に比べ有為な生着延長効果が得られ(50.3±32.8日、19.5±6.7(各n=10))、抹消血chimerismを示す期間も延長した。移植後2週間のdonor細胞のdistributionを解析すると、胸腺には骨髄移入FK506IV群にのみにchimeraが確認された。FKに起因する胸腺髄質障害からの治癒過程においてドナー骨髄細胞が胸腺内にリクルートされる可能性が考えられた。
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