研究概要 |
異種臓器移植における強い液性および細胞性免疫応答を制御するために、異種donor特異的な低反応性を誘導しうるプロトコールの確立が望まれる。我々はhamster-to-rat肝移植モデルにおいて、核酸代謝酵素であるhypoxanthine phosphoribosyltransferase(HPRT) primerを用いたxenogeneic microchimerism(XMC)の同定法を確立し、XMCの動態とgraft生着期間の関係を解析し、さらにdonor骨髄細胞同時移植によるXMCの増強がgraft生着を延長する可能性について検討してきた。さらに本法が肺移植や心移植で応用可能か否かを検討した。 Hamster-to-rat心、肺移植モデルでは、肺では拒絶群、長期生着群共に移植直後よりXMCを認め拒絶の進行とともに消失するのに対し、心では直後は観察されず、臓器内passenger cellの多寡が反映された。しかし長期生着群では肺、心ともに50及び30日目よりXMCのdelayed developmentが認められ、migrateしたdonor cellがproliferateしてきた可能性を示すものと考えられた。心移植においてdonor骨髄細胞(2×10^8cell/body)を移植直後のrecipientに注入し免疫抑制剤(Cycrophosphamide,FK506)を短期間投与したところ、免疫抑制剤単独投与に比べ有意な生着延長効果が得られ(41.8±14.2日、26.5±10.1(各n=6)、抹消血XMCも増強された。しかし恒久的なXMCの維持は困難で、XMC消失に伴いドナー特異的低反応性は不安定となり移植臓器は拒絶された。 更にドナー臓器のmodificationによる拒絶反応の抑制を目的とし、同種肝移植モデルを用いてドナーを放射線照射の有無、投与骨髄細胞数によって4群に分類し肝移植後の生着期間を観察した。無処置群が平均7日で拒絶されたが、ドナーに600rads照射、recipient骨髄細胞(6×10^8cell/body)門注投与を併用した群は27.2±23.3日と著明に生着延長し、ドナー肝臓をレシピエント化させることにより拒絶反応を有意に抑制できた。
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