同種及び異種移植モデルにおける骨髄細胞を用いた生物学的免疫操作による免疫寛容導入法の確立を目標とし、異種肝、心、肺移植モデルにおいてMCの動態を観察し、更にドナ一骨髄と実質臓器の同時移植による移植臓器生着延長効果を検討した。まずhamster-to-rat combinationにおけるPCR増幅によるMC同定法を確立し、この方法を用いてhamster-to-rat心、肺移植においてMCとgraft生着との関係を検討した。肺移植におけるMCの推移は移植成績を良く反映し、長期生着群では一度消失したMCが再び高陽性を示すという特徴的なdelayed developmentを認めた。心臓移植では、initial phaseのMCがほとんど確認されなかったが、長期生着群では肺移植と同様にMCのdelayed developmentが認められ、レシピエントにmigrateしたドナー細胞がproliferateしてきた可能性が示された。次にドナー骨髄と臓器(肝、心)の同時移植における異種MCの増強による異種ドナー特異的低反応性を獲得と移植臓器生着期間の延長効果を検討した。実験群は(1):無治療群、(2):ドナー骨髄同時移植(DBMT)単独群、(3):短期免疫抑制剤(肝:FK506、心:FK506+CYP)群、(4):DBMTと短期免疫抑制剤併用群とした。平均生存期間は、いずれも(3)群に比べ(4)群で有意な生着延長が得られた(P<0.05)。肝移植では末梢血MCを示す期間も明らかに延長し、心移植では(3)群ではほとんどみられなかったMCが、(4)群で拒絶の直前まで観察された。以上の如くDBMTと実質臓器の同時移植と短期間の免疫抑制剤投与によりMCが増強、維持され移植臓器生着期間が著明に延長することが明らかになった。しかし異種においては恒久的なMCの維持は困難で、その消失に伴い移植臓器は拒絶された。恒久的なMCの維持をめざし、今後骨髄投与法の検討および異種幹細胞排除のメカニズムの検討を必要であろう。
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