研究概要 |
手術摘出後凍結保存された乳癌130腫瘍、胃癌70腫瘍、大腸癌94腫瘍、膵癌を用いて検討した。腫瘍からDNAを抽出し、既存の電気泳動装置を用いてサザン法にてテロメア長(Terminal restriction fragments)を測定したが、短縮例は27%に過長例は8%に検出された。また蛋白とRNAを含む抽出液を用いてTelomeric Repeat Amplification Protocol assay(TRAP assay)にてテロメラーゼ活性を測定した。非癌部組織では、胃及び腸管粘膜に活性を認め、粘膜凍結標本の管腔側からの連続切片で検討した結果、陰窩の底細胞(おそらくintestinal stem cells)のある部にテロメラーゼ活性を検出した。よって、非癌部に比べ癌部が活性が高い症例は、乳癌で95%,胃癌の85%,大腸癌の73%,膵癌の96%に検出された。さらに、nonisotopeで検出する系を用いると、PCR回数を31回から35回に増やし購入したUVサンプル解析装置を用いることでテロメラーゼ活性の検出感度は同程度で臨床応用可能と考えられた。凍結切片を作成し、in situ PCR法にて直接腫瘍内のテロメラーゼ発現の有無の検討を腹膜播種細胞、膵癌ブラッシング細胞で試みたが、テロメラーゼ活性を有する細胞と検出されない細胞が混在し、heterogenietyが存在し、細胞回転との関連が推察された。乳腺腫瘍の吸引細胞82検体、胃及び大腸の内視鏡で得られた38組織をnonisotopeのTRAP assayにて検討したが、細胞診組織診での悪性であった組織の83%が陽性で癌細胞の存在診断に有用と考えられた。上記検討した結果から、テロメラーゼ活性は癌細胞の存在診断に有用と考えられた。また、正常粘膜組織のテロメラーゼ活性の存在と癌組織の活性度を比較すると、全ての癌細胞で活性化されているわけでなく進行と伴に活性化した癌細胞が選択増殖してくると考えられ、進行癌がテロメラーゼをターゲットとした治療の良い適応であり、その際には正常粘膜、血液幹細胞などへの影響を念頭におくべきである。
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