研究概要 |
移植後動脈硬化性変化の解析にあたり、まずminor抗原のみ異なる組み合わせであるAKR→C3Hにおいて頚部異所性心移植を行ない、graft survival、冠動脈に病理変化について検討した。 その結果、無処置でも200日前後生着するものの、冠動脈の内膜肥厚、心筋への細胞浸潤、繊維化が徐々に進み慢性的に拒絶されることが判明し、この組み合わせが心移植後の慢性拒絶としての動脈硬化性変化の解析に有効なモデルとなることが判明した。 当施設において移植後の拒絶反応抑制のために開発を進めている特異的免疫寛容のうちcyclophosphamde(CP)誘導性免疫寛容をAKR→C3Hの組み合わせに適用し移植後の動脈硬化性変化の病理学的検討、免疫寛容状態の検討(キメリズム、clonal destruction)を行なった。 その結果、ドナー脾細胞1×10^8静脈内投与2日後200mg/kgのCPを投与することにより、AKR→C3Hの組み合わせでは、移植後200日でもmixed chimerism,clonal destructionは認められ、移植心は永久生着が得られ、移植後の動脈硬化性変化も完全に抑制された。CPを100mg/kgとした際には移植後200日ではmixed chimerism,clonal destructionは漸減、消失し、心筋への細胞浸潤、繊維化は進行するものの、動脈の硬化性変化は極く経度であった。 以上から移植後の動脈硬化性変化はマイナ-抗原のちがいでも生じるもののマイナ-抗原のみ異なる組み合わせにおいてはわれわれが開発を進めてきたCP誘導性免疫寛容により抑制可能であること。さらに心筋の拒絶程度と冠動脈の硬化性変化の程度が必ずしも一致しないことが判明した。 今後はclassI,IIのみ異なるcongenic mouse、knockout mouseを用いて移植後動脈硬化性変化のより詳細な免疫学的機序の解明、MHCの異なる組み合わせにおいても有効な移植後動脈硬化性変化の予防法の確立、に向けてさらに検討を施行中である。
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