細胞培養による動脈血行再建術後晩期閉塞の病態ならびに制御対策の解明

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457306
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 琉球大学
• 研究代表者: 草場 昭 琉球大学, 医学部, 教授 (40038659)
• 研究分担者: 佐久田 斉 琉球大学, 医学部, 助手 (80244309) ; 鎌田 義彦 琉球大学, 医学部, 講師 (10177561)
• キーワード: 末梢動脈血行再建 / 術後晩期閉塞 / 仮性内膜肥厚 / 内皮細胞 / 壁面剪断力 / 末梢血管抵抗 / コラーゲン / 細胞培養

研究概要

末梢動脈抵抗の高い血流環境下で移植された自家静脈移植片、ならびに吻合部の肥厚内膜の内皮細胞が壁面剪断力の情報を内皮下の平滑筋細胞へどのように伝達するか未だ不明である。我々は、各種コラーゲン、特にIおよびIV型コラーゲンを中心に壁面剪断力の違いが内皮細胞にどのように影響するか検討した。
方法:シャーレに犬より採取した血管内皮細胞をほぼ飽和状態になるまで増殖させたところで、回転装置に載せて培養器の内で72時間培養する。回転装置は6分の1秒で最高回転角速度の毎秒300度に達し、約0.5秒間この速度を維持した後約6分の1秒で減速し、約6分の1秒間静止する(1サイクル)よう作製した。このような動きで培養液によってシャーレ表面に培養してある内皮細胞には、中心より1cmの部位では最高約1.3dyne/cm^2、中心より3cm離れた部分では最高約4dyne/cm^2の壁面剪断力変化が生じる。各シャーレに対して抗I型および抗IV型コラーゲン抗体を1次抗体として、免疫組織化学的に各コラーゲン量を中心より1cmの細胞および中心より3cmの細胞について半定量的に検索比較した。
結果:I型コラーゲンについては壁面剪断力変化の低い内皮細胞の方が有意差をもって10%多くのコラーゲンを産生することが分かった。IV型コラーゲンでは、逆に壁面剪断力変化の高い細胞が有意に15%多くのコラーゲンを産生することが分かった。
考察:Shear stressの高いところではしっかりとしたbasement membraneの形成により平滑筋の増殖や蛋白合成を刺激する各種因子が平滑筋細胞に到達し難く、また平滑筋細胞の増殖や蛋白合成を促すとされるI型コラーゲンの刺激が少ないことにより、過度の内膜肥厚が起こらないメカニズムのあることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Shiroma H.Kusaba A.: "Ultrastuctural features of progressive intimal hyperplasia at the distal end-to-side anastomosis of vein grafts" Cardiovascular Surgery. 4(3). 393-398 (1996)
• [文献書誌] Kawabata T,Kusaba A,et al.: "Pathophysiological features of intimal hyperpiasia of the arterially implanted autovein graft and its anastomosis in dogs." International Angiology. (in press). (1997)
• [文献書誌] Ohta O,Kusaba A,et al.: "Development of vasa vasorum in the arterially implanted autovein graft and its anastomosis in dogs." International Angiology. (in press). (1997)
• [文献書誌] 佐久田斉,草場昭,鎌田義彦,他: "膝下病変に対する血行再建術の検討" 日本血管外科学会誌. 4(5). 29-35 (1996)
• [文献書誌] 佐久田斉,玉木正人,鎌田義彦,他: "ペラプロストナトリウムの末梢循環改善作用とワ-ファリン併用の影響に関する検討" 脈管学. 35(4). 231-237 (1995)