平成8年度までに家族性乳癌患者におけるER遺伝子連鎖の可能性を検討したが、ER遺伝子の連鎖がみとめられる可能性のある家系のER遺伝子のgermline mutationは認められなかった。また、ER遺伝子の多型と乳癌感受性の検討で、Codon 325におけるCからGへのsequence variantの出現は乳癌患者に比べて非乳癌患者に多く、またER陽性乳癌よりも陰性乳癌に多く認められる傾向にあった。平成9年度は以下の研究に進んだ。 (1)ホルモン依存性の消失とER遺伝子の変化: 乳癌治療においてホルモン療法に耐性ができることは極めて大きな問題であるが、この耐性出現の機序におけるER遺伝子のgeneticな変化はほとんど関連性がなかった。mRNAレベルでのスプライシング異常によるvariantの出現や、DNAmethylationによるepigeneticな変化の関連が示唆された。 (2)ER∂とERβとの関わり 最近、従来のER(ER∂)とDNA結合domainおよびホルモン結合domainで相同性のあるERβが同定された。乳癌組織におけるERβの発現をRT-PCRで検索し、ER∂の発現と比較検討しているが、現在までのところ、乳癌におけるERβの発現はER∂発現および臨床病理学的因子と関連が無く、その機能についてさらに症例を重ねるつもりである。
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