研究概要 |
(目的)OK-432の抗腫瘍効果のメカニズムを分子生物学的に明らかにする為に、同剤の誘導するサイトカインの発現量が全身と局所(乳斑,MS:OK-432注入後早期に好中球がmigrateする場所)で異なるかを検討した。対照として、非活性型OK-432類似溶連菌、PC-C203U,を用いた。 (方法)BAMC-1癌細胞をBALB/c腹腔内注入後2日目より2日間隔に5回、OK-432またはPC-C203Uを腹腔内投与し生存日数、腹腔内細胞のアポト-ジス、全身(肝、脾)及び局所(MS)におけるサイトカインmRNA(IL-8,INF-α,IL-1β,IFN-γ)の発現量をそれぞれDNAラダー法及びRT-PCR法を用いて検討した。 (結果)OK-432及びPC-C203U,投与で夫々67%、33%の生存が得られた。両治療法とも同等に腹腔内浸出細胞のアポト-ジスを誘導した。また、両者ともIL-8,TNF-α,IFN-γの発現を誘発し、それらの発現量は肝、脾、MS間には差がなかった。しかしOK-432投与では、IL-1βの発現量が肝及び脾に比しMSにおいて高い傾向が認められた。菌投与4時間後の腹腔内好中球の腫瘍細胞付着能には両群間で差がなかった。 (考察)OK-432及びPC-C203Uとも非特異的に炎症性サイトカインを誘導した。また両治療による腹腔内細胞のアポト-ジスは差がなかった。これらの点から、OK-432とPC-C203Uの抗腫瘍効果の差は、早期に誘導されるサイトカイン及び好中球の抗腫瘍作用に依存するよりは、その後に生じる細胞性免疫の変化の差によることが確認された。
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