研究概要 |
本研究では、臓器移植に応用可能な、簡便、迅速、正確なHLA-DNAタイピング法を確立し、腎臓移植ネットワークにおいて臨床応用することを目的とした。そのために、DNA増幅にはPCR法を採用し、増幅産物の解析にはSSO法の一種であるHPA(Hybridization Protection Assay)法を採用した。増幅のためのprimerは、DRB1〜B345を同時に増幅するgenericなものを用い、30種のprobe(DRB1用22種、DRB3〜B5用7種、陽性対照1種)を用いてHLA-DRB1,B3〜B5タイピングを実施した。本年度54例の健常者、移植希望者のタイピングを実施した。検査時間は、DNA抽出に30分、DNA増幅に2時間、ハイブリダイゼーション、検出に1時間と全行程3時間半で終了した。その結果、判定可能率は98.1%であり、血清学的結果との一致率は100%であった。DR1,DR7,DR9,DR11,DR12,DR13,DR1403,HR5は1対1対応で完全にアリルタイプに一致した。更に、DR2,DR4,DR8,DR14はより詳細なアリルタイプが可能であった。また、DRB1と強い連鎖不平衡にあるDRB3〜B5の結果も同時に得られた。検査時間が短く、かつ精度が高いことから、迅速で、正確な検査が必要とされる死体腎移植ドナータイピングに有用な方法であると考えられた。
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