研究概要 |
一連のdrug delivery system DDSの研究を発展させ,以下の結果を得た. モノクローナル抗体のDDSとしての有用性を,私どもの開発した抗CEAキメラ化Fab,オリゴマーを用いたヒト膵癌株化細胞移植ゼノグラフトモデルで検討し,組織集積性その他より,将来臨床応用可能を証明した. 非侵襲的なimplant型DDS,即ち温度応答性ゾル-ゲル相転移型DDSの開発,改良については,高分子としてN-イソプロピルアクリルアミド(NIPA Am)の共重合体が最も有効であることを確認し,コモノマーとしてのグリシジルメタクリレート(GMA)の混合比率を変化させることにより,薬物放出の制御が容易になることを明らかにした.無胸腺マウスの背部皮下に移植した肝腫瘍Alexander株を用い,この高分子体に5Fuを拡散させたDDSの抗腫瘍効果を証明するともに,非担癌動物への投与時に,非癌組織に無害であることを証明した.さらに血管新生阻害剤としてその将来性は注目されているが,全身よりの排泄が速いことが最大の欠点であるFumagillol誘導体(TNp-470)の臨床応用の可能性を,このDDSで進展させるべく検討した.当初,親水性のポリマーに薬剤設計を計画したが,TNP-490の水への溶解度が2〜3mp/mlと低く,37℃の水溶液中では半減期が2〜3時間で加水分解されることが判明し,新たに親油性のポリマーを用いたマイクロカプセル化やemulsion化を試み,ほぼ目途が立ってきた. 前年度より始めたグルタミンシ一トDDSの開発,改良には,ポリ乳酸および乳酸を用いたDDSよりセルロースまたはポリ乳酸とアルギン酸のDDSの方が優れていることが判明した. さらに癌組織における活性化酸素や組織線溶系の各酵素のagonistやantagonistをDDSに組み込むべく,臨床および動物実験で消化器癌組織と非癌部のMnSODやOsteopontin,線溶系酵素活性を検討し,それらが将来可能のあることをかなり明らかにした.
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