研究概要 |
【目的】ミトコンドリア脳筋症と総称される多用な疾患がミトコンドリア遺伝子の欠失に基づいていることや、ミトコンドリア遺伝子異変の蓄積が変性疾患や加齢に伴う変化に関与していることが明らかにされてきた。本研究では、肝硬変におけるmtDNAの異変について調べた。 【対象と方法】正常肝、慢性肝炎肝、硬変肝、および肝細胞癌の採取を名古屋大学医学部付属病院において行われる肝切除術時に行った。欠失mtDNAの検出は、サザンブロット法とPCR法を用いた。PCR法では、ATPase6遺伝子とD-loop領域との間の7,436bpの欠失をもったmtDNAと、ATPase6遺伝子ND5遺伝子との間の4,977bpの欠失をもったmtDNAを検出した。 【結果】サザンブロット法では、欠失mtDNAは検出できなかった。PCR法では、4,977bpの欠失をもったmtDNAと7,436bpの欠失をもったmtDNAが検出された。そして、それらの正常mtDNAに対する比率は、正常肝に比べ肝硬変と肝細胞癌で有意に(p<0.01)減少していた。(正常肝vs慢性肝炎肝vs硬変肝vs肝細胞癌;7、436bp欠失mtDNA,(3.1±1.4)・^<ー4>%vs(1.1±0.6)・10^<-4>%vs(0.0±0.0)・10^<-4>%(mean±SD);4,977bp欠失mtDNA(3.2±1.2)・10^<-4>%vs(3.4±0.5)・10^<-4>%vs(1.1±1.0)・10^<-4>%vs(1.1±0.2)・10^<-4>%) 【結論】肝細胞には欠失を有するmtDNAが存在するが、それらは慢性肝炎から肝硬変、肝細胞癌と病態が進むにつれて消失することが示された。
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