I.肝冷保存における肝障害抑制に関する研究 すでに我々は肝冷保存においてクッパー細胞が活性化し、これが類洞内皮に障害性に作用することを明らかにした。しかしながら、クッパー細胞の活性化により早期に類洞内皮障害が生じるとの知見から、クッパー細胞の活性化は類洞内皮の障害促進因子であると考えられた。そこで、我々はvascular endothelial growth factor (VEGF)が類洞内皮細胞の培養系における生存期間を著しく延長させることに着目して、VEGFによる冷保存肝の類洞内皮障害抑制効果を検討した。まづ、培養系において冷保存下培養類洞内皮細胞の復温後の生存率がVEGF添加により有意に向上することを形態学的、及びMTT assayで立証した。さらに、肝組織の冷保存においてもVEGF含有保存液により類洞内皮の形態と機能が維持されることを走査電顕とヒアルロン酸のクリアランス試験により明らかにした。 II.肝切除後のCD14mRNA発現と肝障害の関連について まづ、マウスの70%肝切除モデルにおいて検討したところ、肝切除後24-48時間で著しいCD14mRNA発現の亢進を認め、抗CD14抗体による免疫染色で主として類洞壁が染色された。クッパー細胞のブロックによりこの発現亢進は減弱し、同時に残肝障害の指標となる血清GOT、血清ビリルビン値の上昇も抑制された。現在、抗CD14抗体投与による障害抑制効果を検討中である。臨床的にも重要な肝硬変では20%肝切除でCD14mRNAの発現が肝、及び肺で認められることを明らかにした。正常肝の20%切除ではこの現象は観察されず、肝硬変切除後の病態との対応を解析する予定である。
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