1.肝冷保存における肝傷害制御に関する研究:既に我々は肝冷保存においてクッパー細胞が活性化しこれが類洞内皮に傷害性に作用することを明らかにした。しかしクッパー細胞の活性化より早期に類洞内皮傷害が生じるとの知見から、類洞内皮傷害の新たな機序が想定された。そこで、我々は類洞内皮細胞のアポトーシスに着目し研究を進めた。その結果、冷保存において類洞内皮細胞は高率にアポトーシスに陥ることを走査型電顕、透過型電顕、TUNEL法などにより明らかにした。そして、VEGFがこれを抑制することを示した。 又、脂肪肝は移植後、高率に無機能肝になることもよく知られた事実であるが、その原因については明らかではない。本研究では、コリン欠乏性脂肪肝をラットに作成し、超微形態的、機能的に検討した。その結果、類洞内皮細胞は冷保存前に既に変性を生じており、冷保存によりブレブの増加、ギャップの拡大、そして糸状変性が促進することが判明した。肝実質細胞の脂肪滴は冷保存時間が長くなるにしたがい大きくなり、ついには細胞質全域を占拠するまでになる。そして類洞を圧迫し、類洞径の狭少化をもたらす。以上の知見は脂肪肝移植後の機能不全に類洞微小循環が深く関与することを示唆するものである。 2.伊東細胞におけるNa^+-Ca^^H exchangerの発見:伊東細胞は類洞を包囲するように存在し、その収縮は類洞微小循環の調節に関与するとの説がある。実際、伊東細胞は血管収縮物質に反応し、細胞内Ca^^Hの増加と収縮を来す。本研究ではNa^+-Ca^^H exchangerが伊東細胞の活性化及び肝の線維化に伴い出現することを初めて明らかにした。 3.肝硬変門脈循環における一酸化窒素(NO)の意義:ラット肝硬変モデルにおいてNOが肝前性に血管抵抗を下げ肝血流量を増加させること、肝硬変における血清NO産物の上昇は肺、肝、膵でのiNOSのmRNAレベルでの上昇によることを明らかにした。
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