研究概要 |
肝癌根治切除50例を用いて、癌細胞増殖能とアポトーシス発生をTGF-α,TGF-β1の面より検討すると、5cm以下の小型肝癌ではTGF-β1が増殖抑制的に働くが、5cm以上の肝癌ではこのような機構が破綻していることが明らかとなった。肝癌の腫瘍血管の臨床病理学的意義をvascular endothelial growth factor(VEGF)(71例)およびplatelet-derived endothelial cell growth factor(PD-ECGF)(84例)の面から検討した。VEGF,PD-ECGFともに肝癌の重要な血管新生因子ではないという結果がえられたが、前者は硬変肝の、後者はC型肝炎ビールス陽性肝の血管新生に関与する可能性が示された。両研究での共通の結果は、Factor8染色で染色される比較的大きな血管の密度が残肝再発に関与することであった。アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト肝癌をヌードマウスに移植し、性別、去睾術の影響を調べると、去睾および雌性マウスでは正常雄性マウスに比べ、著明に腫瘍発育が抑制された。また去睾マウスでの抑制は、ストステロン投与により回復した。このような変化はARを介して起きていると考えられた。AR阻害剤cyproterone acetate(CPA)の効果をAR陽性および陰性肝癌株を用いて培養実験で検討すると、AR陽性株では増殖が抑制され、この現象はTGF-β1高発現によるG_1期での細胞分裂周期の停止とアポトーシス誘導によることが明らかとなった。標的細胞内でtestosteroneを最も強力な生理活性をもつdihydrotestosterone(DHT)に転換する還元酵素5α-reductaseの阻害剤、FK143の効果をin vitro,in vivoで検討したところ、本薬剤がAR陽性肝癌では抑制効果を発現するが、陽性腫瘍では無効であることが明かとなった。さらにFK143の発癌抑制効果をSolt-Farber法を用いてラットで検討すると、治療群でenzyme-altered foci,hyperplastic noduleの形成が抑制されることが解明された。
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