研究概要 |
単純ヘルペスウイルス1型(以下HSV)由来の欠損型非増殖性HSVベクター発現系を用い,癌性腹膜炎の臨床にも応用可能とするため,導入効率および感染のコントロールについて方法論的に改良,発展させ成書にまとめた(シュプリンガー・フェアラーク東京)HSVベクタ一のクローニングサイトにはマーカー遺伝子としてのlacZ,治療遺伝子のhuman IL-2またそのコントロールとしてanti-sanseを組み込み,in vitro/vivoの実験系において有用であった. In vitroでは悪性度の異なる人胃癌細胞株であるMKN28とMKN45をHSV/IL-2と培養し上清中へのIL-2の産生をELISA法にて測定したが,両者とも効率的にIL-2の産生を認めた.高濃度のベクターとの長期にわたる培養では,細胞のviabilityが減少し,ベクターあるいはヘルパーウイルスのcytotoxicな影響は無視できず今後の課題と思われる.ヒトリンパ球への導入効率についてはさらに検討中である. In vivoではヌードマウスの癌性腹膜炎モデルにて,その治療実験を行った.HSV/IL-2によるex-vivo treatmentではマウスに腫瘍(MKN45)は生着ぜず,また治療実験では腫瘍移植後のHSV/IL-2単回投与でも有効であったが,現在複数回投与の有効性を証明している.また治療過程のマウスの免疫パラメーター(NK活性、血清IL-2,血清lNF-γ等)は,著明に上昇しでいた.治療効果はNK細胞のブロッカー(AA-GM1)にて消失しまたメモリーも存在しないため,NK細胞の活性化によることが確認された.
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