研究概要 |
肝癌切除例86例を対象として、細胞周期関連遺伝子であるp21,p53,PCNAの発現をホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いて免疫染色を行った.非癌部肝組織において、p53発現は認められなかったが、P21およびPCNA発現は様々な頻度で認められ、P21発現とPCNA LIの間には有意な相関が認められた。肝癌におけるp21,p53発現症例は各々61.6%,30.2%であった。癌部における蛋白発現率が20%以上のものを陽性とすると、p21,p53陽性症例は各々10例と20例であった。p21陽性p53陽性例は4例、p21陽性p53陰性例は6例であり、両者の間には相関は認められなかった。p21陽性例ではPCNA LIが33.7と陰性例(PCNA LI=24.3)に比べて高い傾向にあった。しかし腫瘍径は陰性例(3.6cm)に比べて陽性例(2.3cm)で有意に小さかった.また再発率は、P21陽性例で有意に低率であった。さらにp53陰性でかつp21陽性6例は全例31-57ヵ月無再発生存中であった。多変量解析では、p53,p21,im.vp,PCNA LIが独立した再発予測因子であった。以上の結果よりP21,P53,PCNA LIを検討することは、肝癌の再発を予測するうえで有用であると思われた。 また、肝癌切除例35例を対象とし、アポトーシス関連物質であるFas,FasLの発現を凍結切片を用いて検討したところ、非癌部肝組織ではFasの発現は増強しているものが多かったが、肝癌組織ではFas発現が減弱しているものがほとんどであった。またFasLの発現が認められたものの多くは、癌の辺縁で発現しており宿主の免疫機構から癌が逃れる機構の要因になっている可能性が示唆された。
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