研究概要 |
目的) 消化器癌における染色体異常、コピー数の相違、及びにDNA量(D.I.)を測定することで癌の転移、悪性度予後等との関連性を究明する。 対象と方法) 1.大腸癌28例(大腸癌同時性肝転移症例9例、大腸癌非肝転移症例19例)をComparative Genomic Hybridaization(CGH)法を用いて検討した。 2.大腸癌同時性肝転移原発巣11例、大腸癌非肝転移原発巣11例、肝転移巣13例の3群においてFlow Cytometry(FCM)、7,17,18,20番染色体のプローベをもちいFluorescence in situ hybridaization(FISH)を行い検討した。 結果) 1.肝転移例では3p(4/9),6q(4/9),8q(5/9),13q(4/9),20p(5/9),20q(8/9)の増幅と17p(3/9),18p(2/9),18q(2/9),22q(2/9)の欠失がみられた。一方、非肝転移例では17p(4/19),20p(6/19),20q(5/19)の増幅と17p(2/19),18q(6/19),22q(3/19)の欠失を認めた。 2.平均D.I.を比較したところ肝転移巣は1.79、大腸癌非肝転移原発巣は1.39、大腸癌肝転移原発巣は1.33であり肝転移巣において有意な増加を認めた。FISHにおいて肝転移巣では各染色体のコピー数の増加を認めた。特に#20染色体においてtrisomy以上の増加は肝転移巣では13例中11例(84.6%)、大腸癌非肝転移原発巣は11例中6例(54.5%)、大腸癌肝転移巣は11例中5例(45.5%)であり、肝転移巣において多くみられた。 考察) 1.2.の結果から肝転移に関して20番染色体の関与が大きいと思われる。特に近年、乳癌において20q13の領域で癌遺伝子が検出されたことなどからも可能性があると思われる。すなわち18qにあるDCC以外にも肝転移に関して20qの関与が考えられた。今回の検討では同時性肝転移症例のみおこなったが将来的には異時性肝転移症例でCGHをおこない、肝転移をおこすシステムを染色体異常の立場から検討していきたい。 また、現在肝臓癌における染色体異常についてもCGHをもちい検討中である.
|