研究概要 |
CGH、FISHを用い大腸癌において以下の検討をおこなった。 (1) 当教室で樹立したびまん性大腸癌株SRM(癌遺伝子分析にてc-myc遺伝子増幅が認められている)においてCGHによる解析をおこない、3p、11pの増幅、8pの欠失が認められた。8pの増幅はc-myc遺伝子の増幅と一致していた。 (2) 大腸癌12例における染色体異常の検討を行ったところ、進行度別、リンパ節転移別に関しては染色体異常において差はなかった。組織型に関しては高分化型腺癌では特徴は見受けられなかったが、粘液癌において9pの増幅がみられた。全体的にみると20p(6/12)、20q(7/12)の増幅と18q(8/12)、22q(5/12)の欠失がみられた。 (3) 大腸癌肝転移9例および非肝転移原発巣19例における染色体異常の相違点を調べたところ、肝転移症例において3p(4/9)、6q(4/9)、8q(5/9)、13q(4/9)、20p(5/9)、20q(8/9)の増幅と17p(3/9)、18p(2/9)、18q(2/9)、22q(2/9)の欠失がみられた。一方、非肝転移例では20p(6/19)、20q(5/19)の増幅と17p(2/19)、18q(6/19)、22q(3/19)の欠失を認めた。肝転移において20qの増幅が関与していると思われた。 (4) 大腸癌肝転移症例における原発巣11例、肝転移巣13例、また非肝転移原発巣11例のFISH、DNA indexによる検討では、FISHにおいて肝転移巣では7、17、18、20番の各染色体においてコピー数の増加を認めた。特に20番染色体においてtrisomy以上の増加は肝転移巣では13例中11例(84.6%)、大腸癌非肝転移原発巣は11例中6例(54.5%)、大腸癌肝転移巣は11例中5例(45.5%)であり、肝転移巣において多くみられた。 以上より大腸癌の染色体異常の検討にはCGH,FISHが有用であった。特にCGHの検討では、肝転移症例に関し20qの増加が関与していると思われた。
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