研究概要 |
本年度は安定同位元素標識トレーサーを用いた一連の研究を可能とするため、主に各機器の整備ならびに標準試料を用いた測定条件の設定などの基礎的な検討を行った。最終目標は実際の生体内におけるアミノ酸代謝動態の測定であるが、ガスクロマトグラフィー質量分析器(GCMS)の条件設定のため、まず安定同位元素標識グルコーストレーサーを用いGCMSの条件設定をおこなった。安定同位元素標識トレーサーを用いグルコースやアミノ酸代謝動態を測定するとともに、同時にこれらを制御していると思われる血中におけるグルコース、各脂肪酸、ホルモンやサイトカインの濃度を測定する機器の整備も行った。さらに基質代謝と密接に関連している生体内におけるエネルギー代謝を知るため間接熱量計を用いたエネルギー消費量の算出、各基質酸化量の算出も施行した。これらの整備とともに成犬を用い、外科的重症病態を想定するため2時間にわたりTNF(1.5,8,10,25ng・kg^<-1>・min^<-1>)を投与し、[6,6-^2H_2]glucoseのbolus injectionを行い、basal period(TNF投与前)とTNF infusion period(TNF投与時)においてグルコース代謝動態を測定し、その結果を数学的な分画モデル(Pool 1:血清分画、Pool 2:細胞内分画をグルコースが分布する分画とした two compartment model)にあてはめ分析した。さらにアミノ酸のトレーサー([1-^<13>C]leucine,[3-^<13>C]alanine,[^<15>N]lysine,[1-^<13>C]valine)の持続投与を施行し、全身的なアミノ酸代謝動態、およびそれぞれのアミノ酸の骨格筋におけるトランスポートを測定した。その結果、TNF投与により、pool 1および 2からのグルコースのirreversible loss(それぞれk_<0.1>,k_<0.2>)の著名な増加をきたした。さらにpool 1およびpool 2の分画間におけるグルコースの交換もTNFの投与量に応じて(dose dependent)増加した。またTNF投与にともない蛋白、アミノ酸の酸化も増加した。骨格筋におけるアミノ酸トランスポートの関しては現在データの集積中であり、分析中である。
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