研究概要 |
われわれは、癌の浸潤、転移と深く関連するといわれているvariant exon6を含むCD44変異体(以下、v6)の発現をRT-PCR/Southem blot法を用い、胃癌において検討してきた。これまでに胃癌におけるv6発現はリンパ節転移や肝転移と相関し、さらにv6高発現群の予後が不良であることを明らかにしてきた。また、CD44 standard form(以下、CD44s)やvariantexon 9を含むCD44変異体(以下、v9)についても検討を行い、CD44s発現は腹膜播種性転移症例で有意に増加していることもわかった。つまり、CD44sとv6は胃癌の転移機構で異なった働きを示し、variantの出現が転移形質を変貌させるものと考えられた。今年度はこれらの結果の研究発表を行った(Int.J.Cancer,79:256-262,1998)。さらに、今年度はスキルス胃癌におけるCD44発現を非スキルス進行胃癌と比較したが、スキルス胃癌でCD44s発現の増強が認められた。これは、スキルス胃癌の腹膜播種性転移にCD44sが関与していることを示している(11th World Congress of Gastroenterology,Sep.6-11,1998,Vienna,Austriaにおいて発表)。なお、CD44変異体のリガンドとしてオステオポンチンが注目されており、肝転移巣の検索でオステオポンチンの発現増強が認められ、転移メカニズムを解明する上で重要な結果と思われた。生検材料の検討においては、生検材料におけるv6発現が手術標本の発現を反映し、予後因子として術前の評価に利用できることを報告してきたが、予後については追跡中で、最長2年6か月を経過したが、残念ながらまだ結果が出る段階には至っていない。 また、今年度は、CD44の転移のメカニズムを解明するために高転移細胞株を入手し、胃癌転移モデルの作成を試みたが、技術的な問題で満足の行く結果は得られなかった。
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