研究課題
本年度は昨年度の結果に基づき、HVJ-リポソーム法で導入した遺伝子の正常消化管組織での集積部位の検討をFITC-オリゴヌクレオチド、及びリポーター遺伝子であるβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)を用い検討した。又、炎症性腸疾患モデル(IBDモデル)を作成し、遺伝子治療のターゲットとなるべきサイトカインの発現を解析した。1、方法:ウィスターラットを用い、FITC-オリゴ及びβ-gal遺伝子を正常消化管に経直腸的及び経血管的に導入した。(1)経直腸的には、HVJ-リポソームの膜融合能の効率を上げる目的で非特異的蛋白分解酵素であるプロナーゼを用い消化管の粘液を除去し注腸法により導入を行った。前処置を行うプロナーゼの至適濃度及び時間は400U/mlで15分であることを粘液染色で確認した。(2)経血管的には、外科的手技を用い大動脈及び腸管膜動脈の血流を遮断し直接HVJ-リポソームを注入した。経直腸的注入の際と同様、導入効率を上げる為血流遮断時間を検討したが約5分が適当であった。(3)ハプテンであるTNBSとエタノールを注腸し、IBDモデルをマウス(BALB/c)で作成した。2、結果:導入されたFITC-オリゴヌクレオチドは導入24時間後に粘膜固有層及び固有筋層の細胞に導入されていることが蛍光顕微鏡下で確認された。又、β-gal遺伝子は導入3日後同様に粘膜固有層で発現していることがX-gal染色により確認された。更に、β-gal遺伝子のm-RNAレベルでの発現をRT-PCR法にて確認することができた。本研究成果は平正10年2月関西遺伝子治療研究会、4月日本外科学会に採択され発表予定である。又IBDモデルはヒト.クローン病に類似した腸病変が形成された。現在IL-1、IL-6、IL-12、IL-18、INF-γの発現を解析中であり、今後はそれらのアンチセンス療法を予定している。