研究概要 |
胸部大血管手術における脊髄虚血およびそれに起因する対麻痺などの神経系合併症は,補助手段が発達した現在においても本領域における重大な合併症の1つとなっている.虚血再灌流障害の機序の1つとして,鉄依存性の過酸化脂質生成を伴う各種のフリーラジカル産生が関与していることが報告されており,本研究ではそのinhbitorであるラザロイドの脳・脊髄保護効果を検討する.実験動物としてNew Zealand White Rabbitを用い,ペントバルビタール麻酔下に開腹して腹部大動脈を遮断して脊髄障害による対麻痺モデルを作成した.合わせて脊髄虚血しおよび組織酸素化の指標として,近赤外線法による脊髄組織酸素分圧を測定した.実験群は 1)ラザロイド前処置群(n=6),2)ラザロイド前処置+再灌流時追加投与群(n=6),3)無処置群(n=6)の3群に分け,ラザロイドの投与量は6mg/kg body welght,大動脈遮断直前(前処置群),および再灌流時追加投与群ではこれに加えて遮断解除直前にも投与することとした.現在各群の実験はほぼ完了し,病理組織学的検索およびTarlov scaleによる対麻痺の機能的評価ではラザロイドの有用性が認められた.現在,虚血再灌流障害時にみられる内皮細胞障害の指標となる各種サイトカインを合わせて測定中であり,これらの実験成果を合わせて英文論文として作成する予定である.
|