研究概要 |
広背筋によるDynamic cardiomyoplastyは1985年Carpentierらが初めて臨床応用して以来,現在まで500例程の臨床例が報告されているが,心機能に及ぼす影響については不明な点も多い.また慢性期には広背筋の線維化が問題となってくる.我々は広背筋起始部の収縮能の減弱した部分でwrappingする従来の方法が,心収縮の補助と言う面から不完全と考え、遊離広背筋停止部の筋肉が厚い部位でのwrappingを考察した.本法と従来法で左室機能を検討するとともに,広背筋を遊離することによる神経切断の影響について検討している. 【方法】実験1)ビ-グル犬で神経切断,胸背動静脈温存広背筋を8週間後に摘出し,preconditioningの有無による筋線維の変化をATPase 染色(pH 10.4)で観察した.実験2)12頭の雑種成犬を用い,I群(従来法)とII群(右内胸動脈と胸背動脈,右心耳と胸背静脈を吻合した左側遊離広背筋でwrapping)間で,LVSW(pressvre volume relation loopsより算出),LVEDPを検討した. 【結果】実験1)preconditioning により耐疲労性のtypeIの筋線維が増加し(正常69.7%,非刺激49.8%,刺激82.1%),筋線維径も大きかった.実験2)I群ではLVSW(970±168→1181±203erg10^3p=0.126) , LVEDV (36.6±6.7→37.2±6.2mlp=0.36)に有意な変化はなかった.II群ではLVSWは増加(694±117→846±104)し,LVEDVは減少(47.7±2.8→46.8±2.7)した(p<0.001). 【結論】遊離広背筋によるwrappingは従来法より左心機能を改善させ,神経切断による筋萎縮は電気刺激を加え続けることにより回避されることが示唆された.また,神経を切断しても筋線維はTypeIへcomvertingすることが判明した.
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