研究概要 |
force transducerによる心機能測定を従来のパラメーターと比較し,心筋収縮性の指標となり得るかを以下の方法で検討した. (方法)体重9〜12kgの雑種成犬を用いた.全身麻酔下に右第4肋間で開胸,心膜を切開,上行大動脈基部に電磁流量計プローブを装着し心拍出量(CO)を,右上肺静脈から左心室にカテーテルを挿入し,左室圧(LVP),左室一次微分(LVdp/dt)をそれぞれ測定した.左室自由壁に2個のforce transducerプローブを長軸方向及び短軸方向に装着,各方向の心筋収縮力(F)とその変化率(+dF/dt,-dF/dt)を測定した.下大静脈にかけたtapeのsnaringにより前負荷を連続的に変化させた時及びドブタミン(3μg/kg/min)負荷時の動脈圧(AP),中心静脈圧(CVP),CO,LVP,LVdp/dt,左室長軸・短軸方向のF,+dF/dtおよび-dF/dtを同時に連続記録した.測定値をそれぞれ前値に対する比(%)で表し,各パラメーター間の関係を統計学的に評価した.(結果)左室長軸方向のFはLVP(相関係数0.633)と,+dF/dtはLVP(0.785),CO(0.642)と有意な(P<0.01)相関を認めた.左室短軸方向のFはAP(0.742),LVP(0.806),CO(0.820)と,+dF/dtはLVP(0.685)と,-dF/dtはLVP(0.692)と有意な(P<0.01)相関を認めた.また重回帰分析により,回帰式LVP(%)=22.174+0.536×(短軸F)+0.364×(長軸+dF/dt),CO(%)=1.017×(短軸F)-7.004が得られ,それぞれの決定計数(R^2)は0.718,0.673であった.(まとめ)正常心においてforce transducerによる左室長軸・短軸方向のF,+dF/dt,-dF/dtはLVP,COといった従来のglobalな心機能のパラメーターとよく相関し,心筋収縮性の指標になると考えられた.force transducerはglobalな指標では評価しきれない局所の心筋収縮力の指標となる可能性がある.
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