<目的> Free-hand homograft弁を用いた僧帽弁形成術の可能性について追求すること。3年間の予定は次の通りである。平成8年度:同種弁の保存法と移植手技の検討、平成9年度:Langendorff潅流心モデルによる急性期弁機能の評価、平成10年度:生存実験による慢性期における弁の評価。 <方法>-平成8年度- ブタ(体重:20kg)を用いてhomograft僧帽弁を作成(保存液にはRPMI1640をベースに10%FBS、5%DMSOを加えたものを用いてprogramed freezing)し、それをhole valveとして同種移植した。その後逆流テスト(心尖部の注入用カニュラから左室に容量負荷を加えて、大動脈起部の圧を測定しながら左房への逆流の程度を測定)により心臓内でのfree-hand homograft弁の評価と、保存後の乳頭筋組織の病理組織学的検討を行った。 <結果> homograft弁移植後の逆流テストでは左室圧が20mmHg前後で約80%の逆流が認められた。 注入量:50ml 逆流量:40ml 大動脈圧:18〜23mmHg 保存解凍後の病理組織学的検討では左室乳頭筋のHE染色標本で組織構築は保たれているのが確認され、特に凍結保存による大きな変化は見られなかった。 <考察> 計測終了後解剖を行い技術的に問題がなかったかどうか検討を行った。左房側、心室側から観察するに弁輪の縫着、乳頭筋への縫着には問題なく、腱索の長さについては後尖の前交連側がやや短めであったがcoaptationは比較的良好で、逆流テストでも漏れは少量であった。 弁機能評価について、今回の方法では心筋は弛緩した状態であり弁輪部の支持性に欠いた状態であった事が逆流に多大な影響を及ぼしたのではないかと考えられ、今後拍動心を用いた実験が必要であると思われた。
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