研究概要 |
本研究の目的は酵母を用いたyeast p53 functional assay(以下yeast assay)を各種の脳腫瘍の遺伝子診断に応用し、その予後判定や治療法の選択に応用するため、本assay法を臨床上の実際的遺伝子診断法として確立することである。そのため我々はまず17対の悪性神経膠腫凍結腫瘍組織とその培養細胞株にてyeast assayを用い変異p53遺伝子のclonalityの状態を検討し、17例中7例に見いだされたp53変異が細胞株においても引き継がれ急速にclonal expansionを起こすことを確認した(Int J Cancer,67:447-450,1996).次に我々は54例の悪性神経膠腫にてp53の変異の頻度を検討,変異はanaplastic astrocytomaの67%,glioblastomaの42%,total48%の腫瘍に検出され(sequenceにて確認),yeast assayは従来の変異検出法に比べて優れていることが判明した.また腫瘍化に関するp53変異において喪失機能のうち最も重要なものは転写活性化能であることが判明した(Mol Carcinog,18:171-176,1997).また,最近発癌との関連が重視されているNitric Oxide(NO)をp53に作用させ,これによりp53遺伝子に特異的なtransversion変異が起こることを証明し発表した(Mut Res41:211-218,1997).さらに星細胞腫以外の100例弱の脳腫瘍にyeast assayを応用して,星細胞以外の脳腫瘍では中枢神経原発悪性リンパ腫以外のものでは,p53変異が非常にまれであることを見いだした(Acta Neuropathol,印刷中).星細胞腫でもpilocytic astrocytomaと呼ばれるgrade I astrocytomaではp53変異が起こっていないことを証明した(Int J Cancer,印刷中).現在はこのアッセイ法を用いてp53変異と予後の関係,化学療法・放射線感受性との関係について検討中である.
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