てんかん焦点切除術を行う場合には、焦点の空間的広がりや焦点部位固有の脳機能を正確に解析する必要がある。皮質焦点てんかんの場合、焦点の中心領域は比較的容易に決定できるが、焦点周囲の正常脳との境界を決定することは困難である。従来の方法では、焦点内の異常波と軸索投射や電気緊張性に拡散した二次的異常波とを鑑別することが困難であった。この様な観点から、大脳皮質に対する外科治療を行う前に、一過性、可逆的かつ部分的な大脳皮質冷却を行い機能的な皮質切除が可能になれば、手術効果ならびにその危険性の判定が術前に確実に行える様になるものと期待される。 上に述べた背景に基づいて、てんかん焦点の可逆的でかつ機能的な切除法を検討した。方法としてはラットならびにマウスのてんかんモデルを作製した上で(ラットはNoda epileptic rat(NER)、マウスはEL mouse)、実験を行った。しかし、ラットやマウスの脳容積が小さく、脳血流が豊富なためか安定した局所脳冷却もしくは全脳冷却は困難であった。また冷却範囲の安定したコントロールも困難であった。このため、関連研究として全脳放射線照射の効果を検討した。その結果、NER rat群で放射線照射によるてんかん原性抑制効果が示唆された。さらに、臨床的に術中に局所冷却法を行いてんかん性発作波の抑制効果を検討した。
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