研究概要 |
我々の施設では,悪性脳腫瘍患者に対する集学的治療のひとつとして温熱療法についての研究を重ねてきた。組織内加温法では定位脳手術装置を用い1mmの針型電極を1〜数本,温度センサーカテーテルを2〜3本腫瘍内に刺入し温度モニターを行いながら加温するが,安全かつ効果的な加温を行うためには二次元,三次元的な温度分布の把握が重要である。有限要素法を用いたコンピュータシミュレーションを行うことにより,様々な形状の腫瘍に対して,二次元的に温度分布を推定し,電極の長さ,本数,位置を合理的に決定することが可能であるが,このシュミレーション法は画像処理,データ処理などの計算過程が繁雑で,なおかつ計算量が多いため生体におけるデータも少なく,現実に日常臨床で利用できる状況ではなかった。そこで我々はパーソナルコンピュータの高性能化が進んできている現在,基礎的なデータを含め検討を行いこのシュミレーションシステムを術前の治療ならびに加温中のモニター化に応用してゆくべく実用化することを目的とした。 昨年度はワークステーションによる画像処理システムの構築を行い,二次元有限要素解析法を用いたコンピュータ温度シュミレーションを確立し得た。本年度はパーソナルコンピュータ上で臨床において簡便に行うべく,治療計画法を確立するとともに精度,誤差の検定を行い,基礎的には各組織パラメータを検討した。 引き続き温熱治療症例の測温データから生体熱物性値を計算した。本年度は6例のデータを得ることができた。 次年度ではこれらのデータからシュミレーションシステムのパラメータを変更し,より正確なシステムへ進展させていく。
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