研究概要 |
DC potentialを計測することで再現性の高い砂ネズミの虚血耐性モデルを作成することができたので,遺伝子発現との関連を見る前に本モデルに於ける耐性現象の性質を明らかにすることを目的に,耐性現象の強度,前負荷とtest負荷と間隔と耐性現象獲得との関連について検討した. 1.砂ネズミ(n=18)において,前負荷(耐性効果がmaximumとなる脱分極持続時間2.5〜3.5分の虚血)の2日後に脱分極持続時間が6分以上の腫々の時間の虚血を加え,1週間後の海馬CA1の神経細胞死の状態を評価した.前虚血負荷がない場合のCA1神経細胞障害を引き起こす脱分極持続時間の閾値4〜6.5分が,前負荷を行った場合10分以上と約2倍に延長した. 2.前負荷(脱分極持続時間が1〜3.5分)とtest負荷(脱分極持続時間が6.5〜8.5分の虚血:正常状態でCA1神経細胞に完全な障害を生ずる十分な虚血)の間隔を6時間(n=15),1日(n=19),4日(n=19),10日(n=11)と変え,各群において1週間後の海馬CA1の神経細胞死の状態を評価し虚血耐性効果を比較した.前負荷後6時間では脱分極持続時間が2.5分以下とやや軽度の前負荷で中程度(温存CA1神経細胞からみると約半数)の耐性効果が観察された.1日以降でmaximumの耐性効果がみられ少なくても10日後まではその効果は持続していた. 3.以上,前負荷後6時間ですでに耐性現象が獲得され,その効果は1日にほぼmaximumとなり,少なくとも10日以上持続することが明らかとなった.その耐性効果はtest負荷の脱分極持続時間を2倍に延長させるほどの強い効果であった. 4.再現性の高い本モデルにおける虚血耐性現象の性質を明らかにすることができたので,今後は,海馬CA1の神経細胞における虚血耐性現象の獲得に必要な遺伝子発現の組み合わせを解明する目的で,様々な遺伝子(heatshock protein, immediate carly gene etc. )発現の脱分極持続時間の閾値を計測し,虚血耐性効果を誘導する脱分極持続時間と比較検討する.
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