研究概要 |
内皮細胞は成熟ラット(Fisher)の脳微小血管から,アストロサイトは新生児ラット(Fisher)の脳からそれぞれ分離し培養した。脳皮細胞は10-20代の継代された細胞を使用し、これらの細胞では脳微小血管内皮細胞のマーカーである細胞間のtight junctionとγ-GTP(膜酵素)活性を失っている。アストロサイトは初代培養の細胞を使用し、マーカーであるGFAPが陽性である。内皮細胞は、Falcon社のdouble chamber systemのフィルター上面に培養した。細胞はこのフィルター上では全く発育せず、type 1 collagenでcoatingすることにより良好な発育を示した。さらにファイブロネクチンで処理すると細胞が密となり、細胞により被われたフィルターの膜電気抵抗が増大した。しかし、透過型電子顕微鏡による観察では、内皮細胞間にtight junctionを認めなかった。今後、フィルター下面にアストロサイトを培養し、内皮細胞の変化を生化学的及び微小形態学的に観察する予定である。 内皮細胞がアストロサイトを呼び寄せる因子に関しては、以下の方法で検索した。内皮細胞をtype 1 collagenゲル内で培養し細胞が血管形成(tube formation)した後に加えた培養上清と単層に培養しconfuluentに達した後に加えた培養上清のそれぞれの組成を生化学的手法で検討した。この結果、前者の培養上清には、後者ではわずかしか検出されないペプタイド(分子量>5万)が多量に含まれることが判明した。管腔形成した内皮細胞が何らかの液性因子を放出しアストロサイトを呼び寄せることはすでに報告した。今回検出されたペプチタイドがこの液性因子と同一な物質か否か今後検討を進めていく予定である。
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