研究概要 |
再発の原因となるグリオーマ細胞の脳内浸潤性に関しては、マウスグリオーマ細胞のDNAにLacZ遺伝子をラベルし、その細胞が脳内を如何に浸潤していくかを研究し既に報告した(J Neurosci Res 38 : 415-423,1994)。そして、グリオーマ関連抗原に対するマウスモノクローナル抗体(ONS-M21)の作製と(Br J Cancer 68 : 831-837,1993)、この抗体のヒト型化にも成功している(Mol Immunol 32 : 407-416,1995)。さらに可変領域のみからなる単鎖抗体の開発に着手し、実験レベルでは既に完成している(投稿準備中)。画像診断への応用として、^<125>I標識ONS-M21抗体あるいはヒト型化抗体を静脈内投与すると、各臓器や血中より実験脳腫瘍内に各抗体が長時間集積することが証明された。さらに、マウスグリオーマモデルに対するヒト型化抗体を用いたオートラジオグラフでは、MRIで同定できない脳腫瘍も描出可能であった(投稿準備中)。さらに、このONS-M21抗体をin vitroでヒト髄芽腫細胞(ONS-76)培養上清に添加すると、20分以内に約20%の抗体が細胞内に取り込まれること(Internalization)が確認されており(投稿準備中)、これら抗体単独による遺伝子導入の可能性とその効率について現在研究中である。一方、遺伝子治療に関する研究として、レトロウイルスベクターを用いたマウスグリオーマ細胞への遺伝子導入実験(Jpn J Cancer Res 83 : 1244-1247,1992 ; Cell Struct Funct 20 : 177-183,1995)を行うと共に、脳特異的遺伝子関連プロモーターでHTK遺伝子を制御したレトロウイルスベクターを用いたin vitroおよびin vivo遺伝子治療実験を繰り返してきた(J Neurosci Res 36 : 472-479,1993 ; Jpn J Cancer Res 86 : 1010-1013,1995,Hum Gene Ther,in press)。また、HVJ-リポソームを用いた遺伝子導入実験では、正常脳組織への遺伝子導入はほとんど認められず、専ら脳腫瘍細胞にのみ表現された。さらに、MGモデルに対するHTK遺伝子組み込みベクター封入HVJ-リポソーム法による治療実験では、コントロール群が全例10日以内に死亡したのに対し、治療群では全例生存しえた(Gene Ther,in press)。そして、グリオーマ特異的遺伝子治療の一環として、ONS-M21抗体やそのヒト型化抗体、さらには単鎖抗体とHVJ-リポソームとの併用によるイムノリポソーム法の開発を現在積極的に推し進めている。
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