研究分担者 |
宮尾 泰慶 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
平賀 章壽 大阪大学, 医学部, 助手 (40243232)
大西 丘倫 大阪大学, 医学部, 助手 (70233210)
有田 憲生 大阪大学, 医学部, 講師 (80159508)
清水 惠司 大阪大学, 医学部, 助教授 (50162699)
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研究概要 |
従来よりレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療法の開発的研究を行い、MBPプロモーターでHTK遺伝子を制御した脳特異的遺伝子発現ベクターの有用性と、その高ウイルス産生クローンの樹立について報告してきた(Jpn J Cancer Res 83 : 1244-1247,1992 : J Neurosci Res 36 : 472-479,1993,Cell Struct Funct 20 : 177-183,1995,Jpn J Cancer Res 86 : 1010-1013,1995)。また、ウイルス産生グリオーマ細胞を脳腫瘍モデルの脳内に移植しガンシクロビル(GCV)で治療したところ、局所腫瘍形成内のみならず、遠隔部位まで浸潤したグリオーマ細胞を後追いしてHTK導入グリオーマ細胞とよく混在したと推測される時期よりGCV治療を行うと、腫瘍増殖を極めて良く抑制した。すなわち、約25%のグリオーマ細胞にHTK遺伝子を導入できれば、GCV投与にてほぼ全例治癒せしめることができた(Hum Gene Ther,in press)。このことは、腫瘍切除後に残存腫瘍にHTK遺伝子を効率よく導入できれば、HTK遺伝子陽性グリオーマ細胞が残存腫瘍内を広く浸潤移動していくので(J Neurosci Res 38 : 415-423,1994)、HTK遺伝子陽性細胞が十分に浸潤混在したと推測される時期にGCVを投与すると、浸潤性の強いグリオーマをも抑制できる可能性(Bystander効果)が示唆された。 レトロウイルスに対するレセプターを有しないグリオーマを治療するには、前述した脳特異的遺伝子発現ベクターをHVJ-リポソームに封入し、グリオーマ細胞内に導入する必要がある。マウス脳腫瘍モデルにLacZ遺伝子をHVJ-リポソームを用いて導入したところ、正常脳組織へのLacZ遺伝子の導入はほとんど認めず、専ら脳腫瘍細胞にのみ表現された。MGモデルに対するHTK遺伝子組み込みベクター封入HVJ-リポソームを用いた治療実験では、コントロール群が全例10日以内に死亡したのに対し、治療群では全例生存しえた(Gene Ther,in press)。さらに、我々が樹立したヒト髄芽腫やグリオーマ細胞に特異的に結合するマウスモノクローナル抗体(ONS-M21)やそのヒト型化抗体(Br J Cancer 68 : 831-837,1993 ; Mol Imunol 32 : 407-416,1995)、さらには単鎖抗体とHVJ-リポソームを併用したイムノリポソーム法を開発することで、より特異的で高導入効率の遺伝子治療が可能である。
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