7例の正常圧水頭症を対象として神経心理学的、神経放射線学的、髄液循環、頭蓋内圧、脳循環動態の各面から本症の病態の検討を行った。その病因として原因不明の特発性が6例、くも膜下出血後の続発性が1例であった。性別は男性2例、女性6例で、発症時年齢は57歳から74歳で、平均年齢は66歳であった。臨床症状として本症の3徴である精神症状、歩行障害、尿失禁の内2徴を有するものが5例で、3徴を呈するものは2例であった。精神症状と歩行障害は各6例にみられ、尿失禁は4名に認めた。脳室拡大の指標としてCTスキャンにてhydrocephaic index(Evans'ratio)を用い軽度拡大(33%以下)、中等度拡大(34〜40%)、高度拡大(41%以上)に分類した。軽度拡大が3例、中等度及び高度拡大が各2例となった。CTでは明らかな脳梗塞巣は認めなかった。MRIにて全例に脳室周囲の高信号域がみられ、4例でその進展が広範囲であった。CT脳槽造影では全例が中等度以上の髄液循環障害を示した。脳血流検査では7例全例に脳血流の低下を認め、その血流低下部位は脳室周囲白質が6例、前頭葉が4例、頭頂葉と側頭葉が各3例であった。小脳の血流は比較的良く保たれていた。治療は7例全例に脳室腹腔短絡術を行なった。術後症状は5例で改善した。手術前に脳室拡大が高度で脳室周囲白質、前頭葉大脳皮質の血流が低下し、持続頭蓋内圧測定で異常圧波の出現が高率であったものに手術治療が有効な傾向がみられたが今後更に症例数の増加を図り、脳幹の循環を含めたより詳細な分析を行なう予定である。
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