目的:本年度は高齢者の脳脊髄液動態障害すなわち正常圧水頭症の髄液短絡術後の高次神経機能や日常生活動作がどの程度改善するかについて検討した。 方法:年齢は70-79才(平均74.8才)の男性6例、女性8例、計14例の正常圧水頭症患者を対象とした。その原因疾患は特発性7例、くも膜下出血後4例、外傷後2例、脳腫瘍術後1例であった。 大脳高次機能の評価は以下の臨床心理テスト1.長谷川式簡易痴呆スケール、2.ミニメンタルスケール、3.ベントン視覚記銘力テスト、4.WAISによって行われた。 結果:髄液短絡術の手術適応は、以下の通りとした。 1.NPHのtriasの2つ以上認める 2.CTにて脳室拡大を認める 3.CTシステルノグラフィーで中等度以上の髄液循環障害がある(type IIIb-V) 4.ICPモニタリングで異常圧波(B波)の出現頻度が高い(>35%) 5.手術・全麻のリスクが高くない 髄液短絡手術結果は、著効4例、やや有効4例、不変4例、悪化2例であった。原因別に分析するとくも膜下出血後水頭症は4例中3例は著効、1例が不変・悪化であった。外傷後水頭症は2例中1例はやや有効、他の1例は不変・悪化であった。脳腫瘍術後水頭症の1例はやや有効であった。特発性水頭症は7例中1例は著効、3例はやや有効、残り3例は不変・悪化であった。 合併症は、両側慢性硬膜下血腫1例、髄膜炎1例、その他の感染症(肺炎)1例、閉塞性血管障害1例、すなわち計29%に認めた。
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