研究概要 |
テロメアは染色体末端に存在する繰り返し配列である。正常細胞にはテロメアを維持する機構が存在しないため細胞分裂にともないテロメアが短縮していき、染色体の不安定性が増して細胞死をきたすと考えられている。一般に、がん細胞ではテロメア配列に結合してこれを伸長する酵素であるテロメレース活性が認められる。しかし、中枢神経腫瘍に関するテロメア長、テロメレース活性をまとめた報告は少ない。グリオーマにおけるテロメア長、テロメレース活性を同時に測定することにより、その実体を明らかにし、また,静止核におけるFISH法による解析を行い,腫瘍マーカーとしての可能性を追究した。 50人の患者より採取した様々な組織学的分類のグリオーマにおけるテロメア長とテロメレース活性を検索した。この結果、グリオブラストーマにおいて強いテロメレース活性が認められ、この際テロメア長は正常組織と同等かそれ以下であった。また、同一患者から異なる時期に採取した検体について、がん進展に伴いテロメア長及びテロメレース活性の変化を検討した。この結果、テロメレース活性が発現する際にテロメア長が短小化しているという相関が示唆された。さらに35%の検体において著しく長いテロメアが確認され、これらすべての検体においてテロメレース活性は陰性であり、ほとんどのものが組織学的分類ではアストロサイトーマグレード(A3)であった。また,テロメアプローブによるFISH法を用い,静止核及びパラフィン標本において,テロメア長の長いグループと短いグループの同定を試みた。その結果,FISH法を用いればテロメア陰性のグループを同定でき,今後はパラフィン標本を用い臨床応用が可能であることが明らかとなった。
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