研究実施計画に基づき、ラットSAHモデル(Jakubowski変法)を用いて、SAH後慢性期にラット海馬の遅発性神経細胞壊死がおこることを明かにした。実験方法としては、ラットウイリス動脈輪を3-0ナイロン糸で損傷することにより、実験的SAHを作成した。慢性期モデルはSAH後7日目に断頭し、左右海馬を中心にH&B染色で病理学的検討を行なった。この結果、軽症SAH群では急性期の遺伝子発現に変化を認めたが組織学的変化は観察されなかった。重症SAH群では急性期の遺伝子発現に加えて出血側の海馬に神経細胞壊死を観察した。この結果は、実験的クモ膜下出血後に遅発性神経細胞壊死が起こることを初めて報告したものである。ただし、ラット頭蓋内圧センサーの開発が遅れたため実施計画のmicrodialysis法によるGlutamate測定を本年度に行うことができなかった。上記の実験結果は、1997年5月にSydney (Australia)で開かれる6th International Conference on Cerebral Vasospasmで発表予定であり、ラット硬膜外頭蓋内圧センサーは、Williamsberg (USA)で開かれる10th International Symposium on Intracranial Pressureで発表予定である。
|