研究概要 |
平成8年度の研究実績を以下に示す。 当施設では、年間約80例の脳下垂体腺腫を手術しており、また以前から採取保存中の腫瘍サンプルを含め手術標本の病理組織学的検索を行ってきた。平成8年度は免疫組織化学的検討に加え,in situ hybridization法を用いて各前葉ホルモンのmRNAの発現を検討した。 1.下垂体腺腫における機能分化,腫瘍発生,増殖に関する因子として下垂体特異的蛋白転写活性因子Pit-1蛋白の発現を免疫組織化学およびin situ hybridization法を用いて分析した。 2.細胞の分化増殖に関与する形質転換成長因子アクチビン,インヒビンのサブユニットの下垂体腺腫における局在を免疫組織化学を用い検討し,主にゴナドトロピン陽性腺腫に深く関わることを確認した。 3.下垂体細胞におけるホルモン合成分泌に関わるとされるPC-1/3,クロモグラニン,Rab蛋白の局在を上記同方法に加え,電子顕微鏡的検索を行いその働きについても検討を加えた。 以上の結果より,正常下垂体,下垂体腺腫における機能分化,増殖にかかわるいくつかの因子を明らかにした。 さらに,遺伝子の発現にはin situ hybridization法に加え,細胞内で遺伝子増幅を行い,その検出を確認するin situ PCR法を下垂体腺腫標本に応用することを開始しており,この方法によって微量の遺伝子発現を検出することが可能となる。 これらの基礎的知見に臨床内分泌学的所見を加えることにより,下垂体腺腫の新しい機能的病理分類を確立し,提唱していきたい。
|