研究課題/領域番号 |
08457377
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
井田 英雄 山形大学, 医学部, 講師 (40184600)
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研究分担者 |
高木 理彰 山形大学, 医学部, 助手 (40241707)
荻野 利彦 山形大学, 医学部, 教授 (60109436)
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キーワード | ポリエチレン / オステオライシス / マクロファージ |
研究概要 |
今年度は、緩みを生じた人工関節の周囲組織から採取されたポリエチレンの粒子がサブミクロンであるという報告から、昨年の30ミクロンの粒子では実際の生体内でのシミュレーションにならない。そこで、粒径の小さいポリエチレンによる変化の違いを検討した。この骨融解モデルを用いて4週齢のウイスターラットを使用し、膝関節腔を展開しセメントピンを昨年同様にラットの大腿骨髄腔に挿入し閉創した。術後2週、4週、6週、8週目に、膝関節内に平均3ミクロンと30ミクロンの粒径の超高分子ポリエチレンをラット血清に混ぜて注入し、対側の膝関節にはラット血清を注入した。術後12週で大腿骨および膝関節滑膜組織を摘出し、硬組織による大腿骨の病理組織学的検索と膝関節滑膜組織の病理組織学的並びに免疫組織学的検索を行った。 セメントピン挿入大腿骨では、ポリエチレン注入群のセメントピンと骨組織間に被膜が10〜100ミクロン異常の暑い線維性被膜があり、内には細胞性浸潤が観察された。さらに粒子の小さい3ミクロンでは、肉芽様組織と骨融解像が顕著にみられた。さらに、ポリエチレン注入群の膝滑膜組織では、ED1(monocyte/macrophage marker)陽性の単球やマクロファージ、異物巨細胞の出現と同時に、3ミクロンのポリエチレン群において粒子が貧食されていたが、30ミクロンの群では、粒子が大きいために貧食されず、ポリエチレンの周囲を取り囲むように細胞が存在していた。特に、3ミクロン群の方は30ミクロン群に比して細胞組織反応が強く、血管新生も豊富であった。 以上の結果から、ラット骨融解モデルを用いて、骨-インプラント間、滑膜組織において、ポリエチレン粒子の大きさにより引き起こされる生体反応の違いが明らかになった。このことから生体で起こっているポリエチレン摩耗粉による骨融解が、滑膜組織内の炎症性肉芽種が骨融解を促進する因子を産生する場となり、ポリエチレンの粒径の大きさによって炎症の程度が左右されることが示唆された。この結果は、平成10年9月、第3回日米欧加合同整形外科基礎学会にて発表予定である。さらに現在この骨融解モデルから採取した検体を研究計画に基づき生化学、分子生物学的解析を行っている。
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