研究概要 |
足関節機能的不安定性は、不安定感を強く伴い腓骨筋を主体とする筋のバランスコントロール不全状態と定義されるが、足関節靭帯損傷後に出現することが多いため、靭帯不全による機械的不安定性との関係が不明であった。 片側でも足関節の不安定感を訴える患者(22名)の両足関節を対象とし,足関節および距骨下関節ストレス撮影を施行し、臨床症状、特に不安定感との関連性を調査したところ、靭帯不安定性以上に足根洞部の圧痛や運動後の外果部痛などの足根洞周辺の炎症症状と最も強く関連していた。 次に足関節機能的不安定性の評価手技には、腓骨筋反応時間とバランスボードでの安定性とがあるため、両者の関連を検討した。機能的不安定群とコントロール群では、腓骨筋反応時間が有意に機能的不安定群で延長していたが、バランスボードでは両群に差がなかった。また両測定法の関連性では、コントロール群では正の相関(腓骨筋反応時間が遅いほどバランスボードでの重心移動量も大きい)を示したが、機能的不安定群では相関はしなかった。 さらに足根洞の炎症と腓骨筋反応時間の関連性を調べるため、足根洞への局所麻酔剤注入前後での腓骨筋反応時間を測定した。注入前は機能的不安定群(9名)81.3msec、コントロール群(8名)71.8msecと有意に機能的不安定性群での遅延を認めたが、注入後は機能的不安定性群は正常化し(69.5msec)、コントロール群は変化しなかったため有意差はなくなった。 以上より足関節機能的不安定性の下記病態が判明した。 1.足根洞周辺の炎症症状と密接な関係がある。 2.足根洞部の機械受容体の欠落により発症するものではなく、むしろ同部の知覚過敏性の影響を受けやすい。 3.腓骨筋反応時間は良い評価法である。 今後おもに動物実験により、炎症と筋反応時間との関連を検討する。
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