特発性側弯症は発生学、組織学、生理学、代謝内分泌学など多くの分野から、その病因についての数多くの基礎的、臨床的研究がなされてきたが、未だ病因解明には至っていないのが現状である。そかし一方では家族内発生例が散見され、発症に遺伝的要因が何らか、関与していることが示唆され、さらに組織学的研究からMarfan症候群など遺伝性疾患の亜型ではないかとの報告もみられている。本研究では特発性側弯症において遺伝的要因の関与を検討し、原因遺伝しの解明を試みた。DNA fingerprintingを用いた22組のtwin studydeha特発性側弯症の一致率は一卵性双生児66.7%となり、側弯の発生に遺伝的要因の関与が強く示唆された。カーブパターンおよび側弯度、後弯度の差を一卵性、二卵性および同胞間で比較したところ、カーブパターンと側弯度では三者間に有意差はなく、後弯度で一卵性双生児間の差が他の二群に比して有意に小さかった。これより側弯の形態と進行の程度に遺伝的関与は否定的であったが、後弯度に燗しては遺伝的要因が示唆された。 特発性側弯症を有する33家系において、常染色体優勢遺伝と考え、浸透率を調査したところ、男性25.0%、女性83.3%と性差がみられた。この値をもとに減数分裂数が10meiosis以上の大家系3家系において、特発性側弯症の原因遺伝子を同定する目的でlinkage解析を行なった。側弯を主症状とする骨形成不全症、Ehlers-Danlos症候群、Kniest症候群、Recklinghausen病、Marfan症候群、Beals症候群などの祖っかん遺伝子であるCOL1A1、COL1A2、COL2A1、NF1、Fibrillin1、Fibrillin2を特発性側弯症の候補遺伝子としてlinkage解析を行ったが、ロッドスコアはいずれの遺伝子座においても-2以下となり、特発性側弯症発症におけるこれらの遺伝子の関与は否定された。これより特発性側弯症はこれら疾患の亜型ではなく、全く異なった病態の関与が想定される。
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