本研究の目的は、臨床応用上最も有用と思われる凍結同種移植半月板の移植後コラーゲン基質の再構築過程を詳細に検討することである。32匹の成熟家兔を用い、左膝内側に凍結同種半月板移植を行った。移植半月板はあらかじめ年齢、体重の等しい他の家兔から採取した内側半月板を液体窒素にて凍結し、移植の際常温の生理食塩水にて解凍したものを用いた。この凍結保存処理により、移植半月板固有の細胞は全て志望していることを^3H-thymidine と^<35>S-sulfate の取り込みが無いことから確認された。年齢、体重の等しい12匹の非手術群の家兔をコントロールとした。術後12週、26週にて屠殺し、移植半月板の組織、血流、生化学(GAG量、DNA量、コラーゲンクロスリンク)、In situ hybridization法によるタイプI、IIIコラーゲンmRNAの発現につき検討した。生化学データはunpairedt-test(p<0.05)を用いて統計学的に検討した。凍結移植半月板では、再度血行を獲得するとともに再び細胞成分増加と細胞外基質コラーゲンの盛んな再構築が認められた。12週でタイプIIIプロコラーゲンmRNAが高濃度に発現していたことは、タイプIIIコラーゲンが通常半月板組織には微量にしか存在せず滑膜組織に多く存在することから、移植後の細胞成分増加には宿主の滑膜細胞が強く関与していることが示唆された。さらにこれら移植半月板の細胞は、移植後26週でIn situhybridizationの結果より通常の半月板組織と同様のコラーゲンタイプを発現しており、さらに細胞外基質コラーゲンはクロスリンクの分析結果より成熟過程にあることが明らかとなった。今回の結果では、凍結保存した半月板は移植後スカフォードとして機能し、細胞成分を誘導し細胞外基質の盛んな生合成が行われていることが実証された。
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