研究概要 |
本年度は本研究の最終年度として、臼蓋形成不全による二次性変形性股関節症の代表的症例について骨棘の発達と特定遺伝子発現の関連について確認を行った。骨棘が発達した症例、骨棘形成がほとんど見られない症例、および骨萎縮タイプとして骨頭壊死の症例に分け、各症例につき複数名の患者より,患者の同意を得て,手術時に大腿骨転子間部より削り取られ,本来破棄される骨破片を無菌的に採取し培養して骨芽細胞を得た。それぞれの骨芽細胞をTrizol液で溶解し、常法により細胞RNAの分離抽出、精製を行い、Differential Display法による遺伝子発現解析を行った。骨棘発達の程度の相違によって特異的に発現する遺伝子の転写物を分離し、DNAシーケンス上でその塩基配列を解析した。骨棘発達に伴い発現が促進される遺伝子3個および抑制される遺伝子2個を選定し、それぞれの遺伝子配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、ノーザンブロット法により、各患者の骨芽細胞における遺伝子発現を確認する作業を実施した。その結果、代謝酵素系および分化誘導因子の遺伝子について症例に応じた特異的な発現が見られた。以上の遺伝子発現と,それに対応する患者のX線像上の骨棘発達の関連について統計学的な解析もあわせ行った.これらの遺伝子は変形性関節症の病期の進行に関与し,また骨棘自体は修復反応とも見なされているので,本研究の結果は骨棘発育を促進する機序の解明につながる基礎データと考えられ,新たな治療法の確立につながると考えられる.
|