研究概要 |
抗原性が高くこれまで最も困難な移植モデルであると考えられているラット major mismatch モデルであるLewis ラットとBrown Norwayラットを用いて遊離皮膚移植実験を行った. (1)抗CD2抗体はマウスハイブリドーマを用いて十分量作成し、flow cytometoric analysisを用い抗体の有効濃度が2mg/kgであることを確認した。また本大学胸部外科との協力でこのmajor mismatchモデルを用いた心臓移植を行って3カ月以上の生存を確かめ、作成した抗CD2抗体の有効性を確認した.control群(12graft)、抗体2日間投与群(12graft)、抗体9回投与群(12graft)を作成し、control群は1週間前後で移植皮膚が壊死に陥るのに対し、抗体投与群は明らかな移植皮膚生着期間の延長がみられた。抗体9回投与群で最長98日間、平均51.3日間皮膚が生着した.mixed lymphocyte reactionの検討を行い、抗体投与2週間で非特異的、9週でほぼ特異的な免疫抑制効果が現れていることを確かめた. (2)、(3)プログラムフリーザ-を用いて段階凍結を経て液体窒素タンクに1週間保存した後に皮膚移植を行った.その際に、各種保護材(グリセリン、エチレングリコール、DMSO)の効果の検討と、減圧環境による保護材浸透効果の検討を行った.移植はautograft(n=24),isograft(n=25),allograft(n=12)の3群を作成し検討した結果、グリセリンもしくはDMSOを0.08気圧の減圧環境下で使用すると新鮮即時植皮と同じ成績が得られることが判明し、組織のviabilityを温存しながら長期組織保存が可能であることが判った.組織毒性の面から保護材としてのグリセリン(1.4モル)を減圧下に投与するのが最適と結論した.超低温処理の抗原性低下作用と考えられる効果により組織壊死に要する期間が4週となり約2倍に延びることがわかった.
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