研究概要 |
骨格筋には再生能力があることは広く知られ,この再生機構は詳細に調べられている。しかし,加齢によりどの程度再生能が低下するかはよく知られていない。一方,筋組織の修復中に持続的に張力を加えたり,あるいは運動負荷を加えると再生能がどのように修飾されるのかについても調べられていない。従い,以下のような実験を行った。 I.加齢にともなう変化.2年齢と3カ月齢のラット前脛骨筋に塩酸ブビバカインを注射し,変性後の再生の過程を検索した。2年齢のラットは注射1週後に初めて筋管細胞(再生線維)が出現した。3週後には一部成熟細胞が認められたが,多くは中心核を含んだ再生細胞であった。4週後も同様であった。3カ月齢のラットでは,3日後に再生は始まり、2週までには再生が完了し、全てが成熟細胞であった。加齢により筋衛星細胞の減数,分裂増殖能の低下が示唆された。 II.共同筋腱切離による再生の影響.ラット長趾伸筋の塩酸ブビバカイン処理後、前脛骨筋腱を切離し,持続的な張力が加わると再生はどのように修飾されるか検討した。3日後より筋鞘下から筋原線維が新生された。その後細胞中心部に変性部が残るためCore/targetoid fiberが認められた。Coreは次第に縮小し,5〜6週後成熟筋線維となるが,対照群と比べ,再生はやや遅れた。 III.運動負荷による再生能の変化.マウスの長趾伸筋に塩酸ブビバインによる変性を起させ,その後トレッドミル上で運動を負荷させた。[3H]TdRを注射し,筋衛星細胞のDNA合成能を検索した。運動を加えると合成は2日後より認められ,対照群に比べ12時間早かった。すなわち,運動は筋細胞の修復と成熟の促進に効果があることが確認された。
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